創薬スクリーニングアッセイの費用感
創薬アドベントカレンダー 2018 10 日目記事
#souyakuAC2018
いわゆるハイスループットスクリーニング (HTS) を実施するには設備投資や大規模化合物ライブラリ管理も必要で、協業しない限りはアカデミアの中小ラボが自力で実施するのは難しい。一方、数百~数千化合物程度であれば、労力と最低限の機器(プレートリーダーなど)があれば一般的な研究費の範囲内で実施しうる。バーチャルスクリーニングによってある程度ヒットを濃縮できていれば、(標的の難易度にもよるが)ヒット化合物の取得までは可能であろう。
本記事では、具体例を見ながら創薬スクリーニングアッセイの費用感を簡単に紹介してみる。
例: 創薬レイドバトル 2018
創薬レイドバトル 実施中!
具体的な見積価格は明かせないが、まずは今回の PD-1/PD-L1 相互作用阻害剤のスクリーニング系でどの程度の費用がかかるか、試薬の実費レベルで見てみよう。
アッセイ試薬
今回は HTRF 方式の 市販のキット を用いてスクリーニングアッセイを実施する。
96 穴もしくは 384 穴プレートでの1ウェル 20 μL のアッセイで、500 サンプルぶんのキットを購入する。数十万円相当。実験 replicate 及びヒット化合物の IC50 測定を含めて 100 ~ 200 化合物程度はこなせるはずである。
ウェブサイトに価格が載っている類似品 (AlphaLISA / ELISA / Cell-based) も見てみると具体的な費用感が分かるだろう。スケールメリット(ボリュームディスカウント)があることも見て取れる。
アッセイ対象化合物
アッセイ実験については今回は化合物ライブラリのベンダーに外注するので、化合物自体は我々の手元には購入しない。指定の化合物ライブラリからの選択となり、1化合物いくらと決まっている。ライブラリの種類によって 1化合物につき数千円~1万円未満 である。スクリーニングアッセイに必要な化合物量は少ないので、mg 単位で個別に粉を購入するよりは安上がりとなっている。
ポジティブコントロール
今回は Nivolumab 及び CAS: 1675201-83-8 を用いる予定。合わせて 15 万円以内。
人件費
実験実施に際して相応の人件費がかかる。
合計
人件費を除けば、今回は概ね 150 万円以内で 100 化合物強はアッセイできる。費用は私 @souyakuchan が負担する参加費無料のオトクなイベントなので、力試しをしたい人は是非参加してみよう!
→ 事前参加登録フォーム (〆切: 2018 年 12 月 31 日)
一般
実際は創薬標的や環境次第で必要な費用の規模も大きく異なる。
- アッセイ系の種類
- 必要な測定機器: 数百万程度のものから数千万~億単位のものまで様々
- 化合物の調達: mg 単位で数千円のものから数万円以上するものまで様々
- 人的リソース: 組織によって人月単価は様々
- スケールメリット: low volume 化が確立していてハイスループットに実施する設備があれば1化合物あたりのコストは下がる
ソーシャル創薬的ポジショントーク
創薬においても機械学習の話題が席巻している昨今だが、正例・負例ともに万遍なく食わせるデータが無ければ真価は発揮されないと考えられる。
とにかくデータを増やす意味でも、みんなで様々な標的に対して様々な化合物をスクリーニングアッセイしてみよう!